Sukiyaki Restaurant IMA-ASA since 1880
すき焼今朝ロゴ
すき焼今朝
  • English (United States)
  • 日本語
コラム

大葉擬宝珠

今朝通信 第59号
『汽笛一聲…上機嫌』
すき焼今朝 五代目当主

日本の古い橋の欄干には、葱坊主のような「擬宝珠(ギボシまたはギボウシュ)」が付いています。これは釈迦の骨壷(舎利壷)をかたどった「宝珠(ホウジュ)」からきているとも云われ、龍神の頭の中から出てきた珠を現しているとも考えられ、お地蔵様など仏様が掌に載せているものもあります。その宝珠を模したので、模擬の宝珠として擬宝珠と呼ばれるらしいのです。

しかしながら、仏教以外に神社では伊勢神宮正殿の高欄の五色の宝珠型の飾りが原型とも云われ、葱のもつ独特の臭いが魔除けになると信じられていた時代に、その力にあやかろうと葱坊主を模して造られ、葱坊主の当て字として擬宝珠が使われた説もあります。

東京の主要な橋は殆ど石橋や鉄橋に架け替えられた時のデザイン変更で、脇に元橋の親柱だけ保存してある程度ですが、京都の三条大橋、五条大橋、或いは伊勢神宮の宇治橋などには、今も擬宝珠が付いてます。

また、東京の北の丸公園内の日本武道館の屋根頂上に黄金色の輝く擬宝珠があります。これは、建築家山田守が近代建築と日本文化の融合を目指し、魔除けも込めて据えました。高さ三・三五米、直径五・一五米もあり、日本一の大きさかも知れません。避雷針の役目も兼ね備えているそうです。

さて、植物にも、若い花茎の先が宝珠の形をしているので、「擬宝珠(ギボウシ)」と呼ばれる百合科の多年草があります。擬宝珠属の植物は東アジアの特産で、日本には本州から北海道にかけて、多くの野生種が自生し、本種など三十六種類に分類されます。その中で、「大葉擬宝珠(オオバギボウシ)」は薄紫色のラッパ状の花を咲かせるので、観賞用としても栽培されていますが、『うるい』の名で市場に出回ります。

以前は山採りのうるいが多かったのですが、栽培が容易なことから、今では畑で育てたものが主となっています。播種しても一斉に発芽しない山菜も多い中、うるいの場合は種から発芽した実生を育てるか、株分けにより増殖が可能です。

日当たりがよく、湿り気の多い畑か、苗床内に植え付け、晩秋に軽く土寄せをするか、籾殻を株元に敷くことにより、葉柄が長く柔らかくなります。芽が出てからしばらくして、葉巻状の若い葉を基部から切り取って使います。

幾分のほろ苦さとぬめりがありますが、クセは少なく、お浸し、汁の実、酢の物などに多く使われます。現在はほとんどがビニールハウス内で促成栽培されており、茎色が白く、ふっくらして、葉先まで澄んだ緑色をしているものを選びましょう。葉先が緑のものは収穫前に日光に当てていますが、全く当てずに収穫されたものは、葉先が黄色ですが、これはこれで柔らかくて美味です。軸の白さと、葉先の瑞々しさで鮮度を確認しましょう。

うるいは乾燥し易いので、濡らしたキッチンペーパーでくるむか、ラップで包んで冷蔵庫の野菜室に立てて保存し、成る可く早めに食べた方がよいでしょう。

うるいの表面の乾いた袴を取り除き、沸騰した湯に軽く塩を足し、茎を入れてから葉を入れます。さっと茹でて冷水に取り、水気を絞って食べ易い大きさに切ります。魚介とうるいを和える際、辛子酢味噌にマヨネーズを加えると、日本酒だけでなく、ワインにもよく合います。

独特のぬめりは、生のままではありませんが、茹でるか叩くと出てきます。和え物やお浸しだけでなく、生のままでも、適当な長さに切ってもろ味噌を付けても美味しいです。また、歯触りを活かして、生のままサラダに利用しても差し支えありません。

天麩羅にしても、とても美味しく、直ぐに火が通るので、炒め物やパスタの具にする場合は最後に加えてください。

葉が開いてからも葉柄は柔らかく、花蕾も若い間は食べられます。葉柄を茹でて干したものを「山干瓢」と云い、保存食でした。

うるいはビタミンCが豊富で、ぬめりの中に、リンパ球を増やして病気に対する抵抗力を高める効果があると云われる多糖類が多く含まれています。

促成栽培は二~四月、天然物は四~五月が旬となります。スーパーで見掛けたら、是非、一度お試しください。きっと春が訪れることでしょう。

二〇一四年春号